『残穢』

小説から映画化したホラー。ホラーなのかな?幽霊とかががっつり出てくるわけじゃないからホラーというのかなんていうのかジャンル分けに困るんだけどまあホラーか。
物語はホラー作家の「私」が主人公で、読者から送られてくる不思議体験エピソードのひとつに目を止めたことから始まる。そこからは「私」と体験者である女子大生久保さんが二人で怪奇の謎を追っていく感じ。始めはマンションの一室で妙な音が聞こえる……っていうものだったんだけど、調べていくとマンション全体でもちらほら異変がある。じゃあ部屋じゃなくて土地に何かあるのでは?と昔の地図やら古い住人やらを訪ねていくと怪奇エピソードが出るわ出るわの結果に。遡っていけば行くほどさらにその前の時代にあった出来事が原因で怪奇が起きてることがわかる。要するに連鎖してるんだね。ヤバイものを見た人がヤバイ死に方をしてその人の霊を見た人がまたヤバイ死に方をしてまたその人の霊が…………という感じで何十年も前から連鎖が起き続いてきているという現状。

この話、小説でも映画でもそうなんだけど幽霊がバーン!って出てくるようなホラーじゃない。とにかく真実を知れば知るほどに気味が悪くなる、そんな感じ。ビックリ系のホラーじゃなくて意味がわかると怖い話みたいなタイプの作品なんだよね。だからこそ読み終わった後見終わった後はなーんか気持ち悪くて気味が悪くて、本とかは売っちゃう人が多いらしい。手元に置いておくのが嫌だからって。
この作品のキーワードはタイトルにもある『穢れ』民俗学ではよく出る言葉なんだけど、要するに良くないもので、死の穢れってのはきちんと浄化しないと土地に残っていってしまう。残った穢れのことを残穢って言うのかな。で、死の穢れは聞いたり見たり関わったりすると感染していくというのがこの作品の醍醐味。だから最終的に全く関係ない場所に住んでた「私」にも穢れが移ってしまったのでは……という曖昧な表現で終わる。これスゲー気持ち悪いよね。読んでる側ももしかして私まで……って感じるからフィクション作品の枠を超えて怖がらせてくる。小野不由美すごい。そして畳をサッ……と擦る音が夜中に聞こえたら私確実にチビる。めちゃ怖い。